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暗殺教室、今さら読んだんで感想!

 

暗殺教室 21 (ジャンプコミックス)

暗殺教室 21 (ジャンプコミックス)

 

 

 

 「殺す」という大変物騒で、非日常的で、口に出すのもためらわれる、破壊力を持った言葉。それをあえて物語の中心に据えるという、危険な魅力にチャレンジした快作「暗殺教室」。
 なずさんに読め読め言われて、まとめ読み派の自分としては、ずーっと佳境だったこの作品、いつ手をつけて良いものか二の足を踏んでおりましたが、完結したということで満を持して挑戦。

 第一印象は「何このマンガ、炎上狙いかな?」とも思いましたが、読了してみれば本当に素晴らしい、こみ上げてくるものがある作品でした。


 特異なマンガだなと思うのは、物語「そのもの」にまったく不安が訪れないこと。
週刊連載だと、なんかダレちゃったな、最近イマイチだよ、とか、このあと(悪い意味で)どうなるんだろう、谷場が生まれてしまうものですが、そういうのは全くなし。
むしろ、そろそろあのキャラのアレ、片付いてほしいな……あのキャラのあの感情、そろそろ爆発するんじゃないの……→ああやっぱり、みたいな、狙いすましたようないい展開。最初から最後まで、抜け目ないお話運びで没頭させられました。
さすが、色々言われるものの、日本一の少年誌です。傑作を出してきます。


 それから特長的だったのが「埋没するキャラクターが誰もいない」。
クラスメイト全員に出番があり、役割があり、使命がある。
主役脇役問わず、互いにリスペクトがある。
タイトルからしてこれは「教室」の話ですからね。一部のキャラクターが話をけん引するならそれは「教室」じゃない。そういう意図があったのでしょうか。
とにかく個々のキャラクターの粒揃いの魅力がたまりませんでした。


 さらに魅力は面白さだけじゃなく、そのテーマにあります。
読み進めていくと、いちいちエキセントリックな題材、味付けの濃いギャグ、強烈な時事ネタに紛れた、この物語の奥底のテーマが見えてきます。


「殺す」ということ。


「殺す」=命を奪い取る、という行為は、すべての読者に経験のないこと(そう願います)。

だから当然「暗殺」という題材が、1000万部を越えるこの作品のファンを生み出しているわけではありません。

描いているのは「命の奪い合い」じゃないんですよね。

それよりもずっと濃く深く描かれている、キャラクターが「殺し続けている」行為。


それは、命を絶つ「殺す」ではなく。


「勢いを止める」「さまたげる」「封じる」=「押し『殺す』」の方。


これが、僕らの共感を呼びます。

これこそ、おそらくこの物語の真のテーマであり、人生にとって普遍のテーマです。

親に、境遇に、肩書きに、過去に、環境に「殺され」続けるキャラクターたちの、悩み苦しみ。
「殺し合い」の真っ只中にいる、少年青年、あるいは「殺し合い」を経て、生き残って大人になったすべての読者に、これが突き刺さらないわけがない。
過激な展開、強烈なギャグに巧みにカモフラージュされながら、着実にまっすぐ育っていく生徒たち。
エキセントリックな外皮に、ヒューマニスティックな中身。
その構造はまさに「殺せんせー」のキャラクターメイキング、そのもの。
作品のテーマは、あらゆる部分において徹底的に描き尽くされていました。


「『殺されても』生きよう」。


20巻のせんせーからのメッセージが、大好きです。
ありきたりな学園ドラマなら鼻で笑って読み飛ばすところでしょうが、実際に命のやり取りを経験した相手から「そう」言われれば、そりゃ、響くよ。
そこに至るまでに描かれてきた生徒たちの「生還」をあたたかく祝福する、せんせーの言葉に、涙が止まりません。

あまりにも突飛でひねくれたストーリーから、あまりにも純粋まっすぐな着地。

気色悪い作品でしたが、でもまあ、きっとそう終わるだろうね、と思わせてしまうのは、作者のバツグンの構成力、筆力のタマモノと言えるでしょう。
本当に最初から最後まで面白く読めました。


自信を持って人にお勧めできる一作です。



まあ、僕がなずさんに勧めてもらったんだけどね。