教養としてのアニソンDJ専攻(2年制)
某アニメ・声優専門学校、ついに『アニソンDJ専攻(2年制)』を作り上げ、アニクラ王を夢見る高校生をフリーターの道へ誘う : アーメン速報 http://www.a-menbreak.com/archives/50660623.html @amensoku さんから
オニイサン、最近のネットの勢いちょっとつらいなと感じます。
批判だらけの「アニソンDJ専攻」なんですが、この「批判」について、結構ニュアンスの違いというか、グラデーションがあるように思えるんですよ。
同じ「けしからん」でも、色んな「けしからん」がないですか?
「コスパがあまりにも悪すぎてけしからん」という人がいます。
微妙に違うスタンスで「お金を払ってまで学ぶほどのことでもないのに、モノの分からない10代からお金を搾取しようという根性がけしからん」という人もいますよね。
あるいは「たかが遊びであって、学びの必要のないアニソンDJなんてものに、金銭的な価値を生じさせようという守銭奴ぶりがけしからん」という人もいるでしょう。
そういう人が寄ってたかることで「言語道断でけしからん」という機運が出来ているような気がします。
最近は万事においてそうですよね。
たとえば、つい先日、某芸能人に起こった事件についてもそうですよね。
同じひとつの事件について、「不倫はけしからん」と感じる人がいました。「自分の言葉でなく、奥さんを引っ張り出して事態を収束させようという態度がけしからん」と感じる人もいました。「そもそもヤツの所属事務所のタレントは、パワハラめいた芸風で前から気に入らなかった」と感じる人もいました。「俺は昔からがん保険のCMに出てる時の棒演技が気に入らなかった」という人もいました。
別に、批判する全員が合意形成をしたわけでもないのに、何となく寄り集まって、何かを排除する流れになるという、ホントに、最近のネットの勢いというのは恐ろしさを感じます。誰とは言いませんが「宮迫です!」のギャグでおなじみの人も本当にお気の毒だなと思いますよ。
アニソンDJ専攻を批判する人たちの大筋の意見は共感します。
皆さんはおそらくこう思っているでしょう。
「アニソンDJ専攻などというものが生まれたとして、超一流のプレイヤーを生み出せるわけではない」と。
はい。僕もそう思います。
どんな素晴らしいカリキュラムを作ったとして、その成績優秀者がすなわちグッドプレイヤーになれるかというとそれは「NO」です。
世の中には、眼の前にいるお客さんが何を望んでいるか一瞬でつかむことのできる「嗅覚」を持った人間がいます。
他の人とまったく同じ振る舞いをしても、その人だけ拍手喝采で迎えられる「スター性」を持った人間がいます。
こうした天性の才能というやつを、学校のカリキュラムで教えることは不可能です。
100%に近い人間が同じことを考えることでしょう。
ただね、ただ。
「いくら良い学びを得ようとも、超一流になれるわけではない」というのは、限りなく真実だと思います。
「だから、いいDJになるために、学ぶことなんてまるっきりムダなんだ」という結論に至るのは、断じて違いますよ。断じて。
超一流になれないとしても、三流が二流になるために、学びは有効だと思うんです。
そういうハンパな結論になっても良いんじゃないかと思うんですけどね。
「座学じゃリアニメーションに出られないよ」それはそう。
でも、目の前の50人に共感してもらうための学びまで否定してほしくないんだよなあ…と思うんですよ。
個人的に、DJは手先の技術というよりは知的労働だと信じて取り組んでいます。
脂肪燃焼団さん、おそ松さんかけて映像で小雨さんの動画出しながら『この後すぐ!』って次回予告みたいにしててめちゃくちゃ笑ったし、ツーフロアならではだなって思った。天才だよ! #アニディスWOMB
— DJアユミデ☆9月2日⏩すぷらっしゅ (@ayu31de) 2017年8月12日
これは僕らがアニディスWOMBのラウンジを任された時のチャレンジです。
「ラウンジはメインフロアに出られなかった人間の集まり」で「ラウンジを任された人間は自分の使命を面白くないと思っている」「あわよくば手柄を上げて、メインフロアを食ってやろうと思っている」という「一般的な思い込み」を逆手に取った演出です。
アユミデさんは面白がってくれてツイートしてくれたと思いますが、僕らは、DJ的な超絶技巧を使って面白がらせたわけではありません。
思い込みを逆手に取ったんです。
こういう面白さを持ち時間の中に盛り込むのもDJの要素だと、僕は思います。
そして、その「思い込み」を見極めるためには、何度も現場に通い、常連のお客さんの思考パターンを分析したうえで、あえて一旦遠ざけて、どうやったら裏切ることができるかを探る、という作業があります。
これは、文学部的な視点でもあり、社会学的なフィールドワークの視点でもあり、心理学でもあり……あるいは、それを行った上で、どうやったらツイッターに書き込んでもらえるか、その日限りの面白さに留まらず、のちの活動に繋げていくか、という意味では、セルフブランディングでもあります。
要するに、アニソンDJに真剣に向き合うなら、文学・社会学・心理学・商学に触れることは可能だと思っているんです。
さらに「どうしたらお客さんに気持ちよく自我を解放してもらえるか?」という意味では、福祉学・教育学に通じる部分もあります。
2年間みっちり学ぶべきことがあるとも思えませんが、アニソンDJを通じて教養に触れる、学問の入り口に立つ、ということは可能だと思うんです。
あるいは、教科書的な学びが、DJプレイに良い影響を及ぼす、ということは、ありうると思っています。
アニソンDJ専攻、そんなものはちゃんちゃらおかしい!無駄!批判すべき!
アニソンDJをやるのに、学びは必要ない!自分の試行錯誤が一番効果的!
そう極端に振れるのは、あまり建設的ではないと思うんです。
「アニソンDJ専攻はコスパ悪いけど、良いアニソンDJになるための学びって、どんなもんがあるかねえ」
そんな中途半端な議論になるのが、そこそこためになっていいなぁと思うんですが。