脂肪燃焼団のおふとりさまですが相席よろしいですか?

脂肪燃焼団のメンバーが日々思ったこと、食べたものなど。

ドラえもんのび太の宝島はたったひとつの条件を除けば文句なしにオススメの名作でした。

 アニソンDJ界でもっともドラえもん映画を愛し、もっともポプテピピックの声優予想を当てた男、ヘロウです。
ポプテピピックの声優を予想してズバリ当てたら、界隈で話題の人になれるかなと思っていたのに全然ハナも引っかけられなくて、あー、ポプテピピックのコンテンツ力を見誤っちゃったなって感じです。昨日大田区のPIOでポプテピピックオンリーの同人イベント開催した主催の方くらい見誤っちゃったなって感じです。でも大好きポプちゃん。


 毎年、自分の備忘録のようにドラえもん映画の感想を書いてるんですけど。
今年の「宝島」は、結論から言うと傑作です。名画です。まったく異議なしです
さすが「君の名は。」の川村元気さんが携わったということで、よくぞここまで良いものに作り上げてくれた、と思っています。
ご自身のインタビューで「自分の感覚を優先しつつ、因数分解してヒットの要因を言葉に落とし込んでいく作業」を欠かさないとおっしゃる通り、


ドラえもんの映画の面白いところがどういう部分と言うことをカンペキに把握された、ドラえもん映画の大好きな人が作った物語でした。


川村さんがドラえもん好きなことは、もう、ビンビンに伝わってきました。
もう、全然まったく、下心が隠れていない。スケベな映画です。ドラえもんスケベ。バーカウンターで女性の腰に手を回しながら「実は今夜、上の階のスイートルームを取ってあるんだ」と言いながら、人差し指のキーをジャラジャラ回して見せつけられている。そんな感じです。なんと言っていいかわかりませんが、脚本がうっとりしています。それは、観た方なら分かると思うんですが、冒頭5分で気づきます。「この導入はお前…思いっきりあれじゃないか!その作品にチャレンジするのか!面白くなかったら世間から袋叩きに合うけど、覚悟を決めたんだな!」という感じ。
上っ面の構成とか、そういう所ばかりでなく。ハートの部分でもそうです。
ドラえもんで文字を覚えて、ドラえもんを通じて、世界の不思議や好奇心や、幾つもの課題に触れてきた、僕らオールドファンに、全編を通じて、そうだよね!と、肯定的なメッセージを送ってくれます。
「この世界は、君の住んでいるその屋根の下と同じように夢と希望にあふれていて、辛いことも悲しいことも、全部、お互いを思いやる気持ちと叡智で乗り越えていけるんだよ!」という、温かい原作のメッセージを、ブレずに、しっかり継承した作品でした。

マニア的な楽しさもくすぐってくれます。
毎年そうなんですが、今までにも増して「今っぽい」演出が際立っています。
ポプテピピック水曜日のダウンタウンのような「知らない人はスッと通り過ぎていくんだけど、知っている人が見たら足を止めざるを得ない」という面白さにものすごくこだわっているな、と。
それは、星野源の主題歌の「ドラえもん」の間奏をよく聴くと「ぼくドラえもん」なのと同じように、よく聴く、よく観る人はより楽しめる、というのが前提に作られていると思うんですよね
「その道具とその道具とその道具を出すということは…そういう意味だよね!いや、言わなくても分かるぞ!俺は分かる!」とか「やっぱり舞台が海だからやっぱりアイツはそういうシチュエーションになるし、それを取り巻くゲストキャラのアレは…まあ当然あの作品のように振る舞うよね」とか「ちょっと待って、今何気なく放ったそのセリフは…そのシチュエーションから考えて、絶対あの作品のインスパイアだよね!」とか、そんなにマニアックでない場所でも、毎年恒例の、ドラえもんの押し入れインテリアネタも冴え渡っていました。「そこ」来ますかって感じ。確かに元ネタもテレビ朝日系列だからそれぶっこんでも全く問題ないよねって!

ネタバレにならない程度に例を挙げるなら。
最序盤に「宝島へ行こう!」と興奮するのび太に「どこかに行くなら宿題をしてから行きなさい」と水を差すママのくだりがあるんです。
別に、何となく見過ごしても良い場面ですが、ファンはビビッと来ざるを得ないんです。海に出る前に宿題を。「海底鬼岩城」ですよね、って。
そういうのがあちこちに、1回じゃキャッチアップできないように作ってある。毎週、はてなブログポプテピピックの元ネタ検証ブログが上がるように、この映画も、NAVERまとめを作りたくなるように作ってある。アマゾンプライムで過去の作品のおさらいをしたくなる。
本当に、お見事としか言いようがないんです。本質はそのままに、2018年なりの楽しみ方、面白さにアップデートされた「水曜日のドラえもん」です
すごく大事な場面で、過去の作品が思い切りフラッシュバックするシーンがあって、思わず涙が止まらなくなってしまって……それをなずに思いっきり観られたのが誠に不覚でした。
今週もう一回、今度はひとりで観ようと思います。


そんな感じで、ホントに基本的に、素晴らしかったなという気持ちなんですけどね。
ただ……1か所だけ……これはもう、良いとかダメとかでなく、僕自身の好みじゃないな、っていうのがあって……。

まあ、こういう部分も2018年っぽいんですが……。

この映画、ストロングゼロなんです。
破壊力は申し分なく、その上、あまりにもデキが良すぎてムダがないんですよ。
体脂肪率5パーセント。均整が取れすぎていて、アスリートみたいな映画なんですね。
どれくらい均整が取れているかというと、今回、見せ場もとても多いせいか「●●」がないじゃないですか。●●はアルファベット2文字です。

その反面、最初期のドラえもん映画って、結構だらしない。導入がメチャメチャかったるいんですよ。
のび太の恐竜だって、肝心の白亜紀行くまでずっとグズグズしてますからね。
のび太が近隣の住民に気を遣いながら当てずっぽうで採掘していたらフタバスズキリュウの卵に遭遇して……。
別に、スペクタクルだけ求めるならシェイプアップしても良い場面。
でも、そのパートが不必要なくらいグズグズしているからこそ、フタバスズキリュウ、ヘビースモーカーズフォレスト、地球空洞説とかいう単語が頭から離れないんですよね。
そういう、作者の思い入れが強すぎるからこそ、いびつで、強烈なワンダーを感じさせてくれる場面が……個人的には「もっと」あってもよかったかな、と思うんです。もちろん、全くないとは言いません。むしろその部分についてはかなり意欲的なチャレンジがされています。
でも、もっと、不格好な作品でも良かったと思うんです。あ、こちらももちろん、まったくスキのない作品とは言えません。というか、明らかにテンションで押し切ってる場面も多いです。そう言う所は実に君の名は。っぽくて良かったんですけども。
そこんとこは、前年の南極カチコチが実に見事に楽しませてくれましたので。


なので、僕の「のび太の宝島」の感想はとってもねじくれててアレなんですが。


歴代でも屈指の傑作です。名画です。文句なしにおすすめです。
世間の評判もものすごく良いと思います。


でも、ドラえもんの映画をまだ1本も見たことのない人への、最初の1本としてはたぶん勧めません。


その一点においては、やっぱりどうしても「恐竜」「開拓史」「大魔境」「奇岩城」「鉄人兵団」「日本誕生」といった金字塔、あるいは「南極カチコチ」に軍配が上がるな、と思います。


自分でもイヤな感想だなと思うんですけども……w
名作すぎると言っていいほど名作なだけに、実に複雑な気持ちを抱く映画でした。